学校の授業のこと

タカヒロ「塾長先生,相談があるんですが」

塾長「どうした?何か質問かな」

タカヒロ「質問じゃないんです。学校の授業のことなんです」

塾長「どんなことかな」

タカヒロ「学校で全然聞けない授業があるんです」

塾長「全然聞けない授業?聞いていない授業じゃなくて,聞けない授業なのかい」

タカヒロ「そうなんです」

塾長「どういうことかな。タカヒロ君が授業放棄しているわけじゃないよね」

ななみ「まさか。タカヒロ君がそんなことするわけないですよ,塾長。スギタじゃあるまいし」

塾長「まあ,そうだよな。何があったのかな」

タカヒロ「先生の声が全然聞こえないんです」

塾長「先生の声が小さいのかな」

タカヒロ「それもありますが,みんながうるさいんです」

塾長「うるさい!授業中にみんな騒ぐのか。先生は注意しないのかな」

タカヒロ「全然しません。最初のうちは注意していたんですが,今ではもう諦めています」

塾長「なるほど,授業崩壊しているんだな」

ななみ「私が中学生のときにも似たようなことありました。私立の中学校ってもっと厳しいと思っていましたが,案外ゆるい先生は授業がどんどん騒がしくなっていくんです」

塾長「なるほどね。生徒間でも注意しないんだろうね。元来,先生がしっかりしなくちゃいけないけれどもね」

タカヒロ「なので自分で教科書からきちんとやらないといけないんです。苦手な科目なので辛いです」

塾長「学校の教室はひとたび授業が始まると閉ざされた空間だから厄介だね。でも,そこまでひどい状態なら,担任の先生か学年主任の先生に言った方がいいだろう」

ななみ「塾長,タカヒロ君には無理ですよ。引っ込み思案で優しいんだもの。でもそこが可愛いのよね」

塾長「こらこら,後輩をからかっちゃダメだぞ。でも確かに難しいね。それならば保護者から言って貰うこともひとつの手段だね」

ななみ「モンスターとか思われないですかね」

塾長「いまのタカヒロ君の場合なら,仮に親が言ったとしても過度にはならない。それに授業を受ける権利が生徒にはある。そしてしっかり授業を行うのは学校の義務だ」

ななみ「何だか今日の塾長,かっこいい」

塾長「今日だけか?」

タカヒロ「僕,まずは担任の先生に相談してみます」

塾長「えらい!それでこそ男の子。頑張れよ」

タカヒロ「はい!」